特別な病ではない

女性

日本人は不安を感じやすい

気分の落ち込みや意欲の低下などにより、病院を受診し、うつ病と診断されると、自宅療養を要するという旨の診断書が主治医より発行されます。それにより、やむなく仕事を休業し、自宅療養できる環境が整って初めて治療がスタートします。休職した直後は、職場の人や自分が残してきた仕事が気になってしまうため、休職する前よりも具合が悪くなったように感じることも多いです。加えて、医師から休職をすすめられ、緊張の糸がプッツリと切れてしまい、しばらく寝たきりのような生活になるのもよくあることです。そうなると、治療をしているのに、と本人も周囲も困惑しがちですが、これがこの時期の特徴だと理解しておくことが大事になります。うつ病に限らずですが、病を患えば、最初は寝たきりのような生活になります。心筋梗塞で絶対安静と言われれば、その指示に従う人がほとんどで、周囲も療養をすすめるのが普通の光景です。うつ病も、同じことです。本人も周囲も寝たきり生活を解消させようと躍起になるのではなく、何も考えずに、しばらくはゆっくり休むことがなによりも重要です。入院するほどではないから大丈夫ではなく、うつ病を治すためには休養は必須になります。このことを、治療スタート時に十分に理解しておくことが回復への早道となります。うつ病の発症要因は、ストレス、性格、遺伝などの複数の因子が複雑に絡み合っているといわれています。中でも、近年のさまざまな研究において、遺伝は無関係ではないことが分かってきています。特に遺伝子レベルでの研究で注目されているのが、セロトニン・トランスポーター説です。人の心の安定にはセロトニンという脳内物質が必要です。そのセロトニンの分泌を調節しているのが、セロトニン・トランスポーター遺伝子で、性格形成とのつながりがあります。この遺伝子には、SS型、LL型、その中間のSL型の3種があり、LL型を持っている人は、おおらかな性格で楽天的です。一方、SS型は逆に不安を感じやすく、うつ病の発症リスク高くなります。日本人で最も多いのがSS型で、LL型に至っては、全体の3パーセントほどです。つまり、不安遺伝子ともいわれるSS型を持つ人が、世界で最も多い民族ということになります。しかし、うつ病の発症要因が100パーセント遺伝子によるものだとすれば、日本人全員がうつ病になるということになってしまいます。実際の性格形成に遺伝子は3分の1ほどかかわっていて、残りの3分の2は環境や経験がつくりあげるものであることが多いです。もともと、発症リスクの高さを持っているということを踏まえて、危険因子が重なり合わないように予防していくことが大切です。そのために、性格に基づく行動分析やストレスをどこで感じるかを把握することが重要になります。